横で眠る「あなた」【未完】
第45章
理先輩は、私を片手で抱きしめながら、話しを始めた。

それは、いずれ話すと言っていた生い立ちの話だった。

理先輩のお母様の柚子さんは、ほとんど駆け落ち同然に、最初の結婚をした。
柚子さんにとって、理先輩のお爺様は、とにかく厳しい人で、家から出たくて仕方がなかったそうだ。
そんな時、出会ったのが伊集院の家に出入りしていた理先輩の実の父親に当たる別府さんと出会った。

しかし、お爺様は、柚子さんと別府さんの結婚を認めなかった。
そこで、駆け落ち同然で、結婚をした。

でも、理先輩が3歳になる頃に、別府さんに捨てられたと同然にな形で、柚子さんは別れた。
そんな柚子さんを、お祖父さんは理先輩と一緒に、呼び戻したそうだ。

そして、5歳になるまで過ごしたそうだ。
この頃は、伊集院だったそうだ。

5歳になる時に、今の戸籍上の父親に当たる田中さんと柚子さんが結婚をしたそうだ。
柚子さんと田中さんの出会いも伊集院の家に、出入りしたことだった。
そして、田中になった。

だから、私は、何も気がつかずただの田中 理先輩だと思った。
理先輩は、苗字には拘りはないと言った。
自分に大切なのは、理という名前だと言った。

確かに、ここまで、苗字に翻弄されたら、そうだろうな。と思った。
そして、理と言う名前が、どんなに重みがあるのかも、想像した。

決して、簡単に話せる話ではないことを、話してくれたことに、感謝した。

「理先輩。話にくいこと話してくれてありがとうございました。」と言った。
理先輩は「いつか、聞いて貰おうと思っていたからね。 聞いてくれてありがとう」と言った。

抱きしめたり、頭を撫でたりなんて、なかったけど、気持ちが繋がってると思える時間だった。




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