牙龍−元姫−
「アタシ朝御飯食べてない!」
「「「「「……」」」」」
このピリピリした険悪ムードの中いきなりのカミングアウト。
【だから、どうした】
そう誰もが呆れて言葉を失った。
「…あのよ〜。お嬢ちゃん?いま言う事じゃね〜の分かる?ん?わかんねえ?分かんねえなら、この【蒼衣君の一週間奴隷契約書】にサインしようか」
「蒼」
「冗談だって。―――チッ」
然り気無く模範生を奴隷としてコキ遣ってやろうとした藍原蒼衣。しかし七瀬庵に咎められて敢えなく断念。舌打ちから反省の色はこれっぽっちも見られない。彼は日夜奴隷捜しに励んでいるのだ。
そんな会話を端に模範生は叫ぶ。空気が読めるのか、読めるないのか――――――それは模範生なりの気遣いでもあった。
「おおおおおおお腹空いたから!はっ、早く行こ!?」
模範生は『早く行こう』と急かす。言い方は違えど『早くここから去ろう』と言いたいことに漸く彼等は気がついた。
「ケッ。テメエは食い意地が張りすぎなんだよ猿!今すぐジャングルに戻って食糧調達でもして来いや。おら、行くぞ」
「え。ジャングルに?」
「ブッ飛ばすぞ。どうやってジャングルに行くんだよ!?行き方も知らねえわ!食堂に決まってんだろうが!腹減ってんだろ!?ならさっさと行くぞ」
「え。お、おうよ!」
「俺オレンジジュース飲みてえ」
「あ。アタシは牛丼!」
「……朝からかよ」
自然と彼等の足は食堂に。
以外に悪態を付かれながらもすんなりと皆行動に移してくれたのが吃驚したかのような模範生。そんな模範生に其々思うことは似たり寄ったり。