牙龍−元姫−
しかし私は知らなかった
何故ドアの鍵が閉まっていたのかを。
てっきり無人だと思ったから鍵を壊し少しだけ足を踏み入れて
こっそり帰ったのに。
まさか、
私が入る前から屋上には"彼ら"がいたなんて―――…
『おい。お前』
『わ、私ですか?』
『昨日鍵壊しただろ』
『……え』
『あそこは立ち入り禁止なんだぜ?なのにお前は足を踏み入れた』
『……な、何で知って』
『バラされたくなかったら着いてこいよ』
不敵な笑みを浮かべ私を脅すのはあり得ないくらいに顔が整っている美形な男。
私は一瞬男に見惚れてたが、次の瞬間には何でバレてるのか焦り困惑気味。
―――そう。
これが寿戒吏との出逢い、
そして牙龍の彼らと出逢う数分前の出来事だった。