牙龍−元姫−




「なあ戒吏。お嬢ちゃんに気ィ使わしたんじゃね〜の?」

「………ああ」




自分たちが"あいつ"の存在を思い浮かべ情けない面していたから模範生に庇われてしまった。いつもは無関心な色の瞳をしている藍原蒼衣も少しだけ顔を緩めていた。










―――――――そんな蒼衣をみていたのは戒吏だけ。






「空は大丈夫なんだな」




―――――――何が?とは聞かなくてもわかる。




「ま〜。お嬢ちゃんにも大分馴れたからじゃねえか?」




女嫌いの空が女子生徒には普通に接している。しかしそれは結構な時間が必要だったこと。


模範生は周りの女子生徒に比べて派手な方ではない。寧ろ地味だ。それはもう一世代前からタイムスリップしたんでは無いかと言うぐらいに地味な模範生の女の子。


だから大野空も馴染み易かった。時間を掛けた馴れか又は女に怯むのは許さない男の意地か。それは大野空自身にしか解らない。



寿戒吏と藍原蒼衣は前を歩いている大野空と加賀谷遼太。それと――――――長い三つ編みの模範生を見つめた。
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