牙龍−元姫−
「なんでカン太の事なんて心配すんだよ」
私の答える間もなく再度私に問う。戒吏にとっては不思議で仕方ないんだろう。私がカン太"なんて"心配しているのが。
カン太"なんて"
そう言う戒吏だけど戒吏はそう思っていないと思う。いや、確実に思っていない。思っているのは私の方だからカン太をそういう言い方するだ。
「心配するのに理由なんていらないでしょ」
これは、本音。
自分でも何が本音か偽りかわからなくなってきた。
矛盾だらけで
‥――――ぐちゃぐちゃ。
修正不可能なくらいに。
「……カン太はお前にとって何なんだ」
眉を潜め、探るような視線。
でも、どうしてそんな視線を向けられなきゃいけないのか分からない。それほど私を疑っているのか否や私にそう言う。
私は戒吏を見て、笑う。
優しい微笑みなんて程遠い。むしろ自虐的に。
「心配いらないよ。カン太に何かしようなんて思ってもいないから」
「なら何でアイツは来ない」
‥―――ああ、そう言う事ね
戒吏はカン太が牙龍来ない理由が何かしら私にあると思っている。あながち、間違ってないよ?
だってカン太が行かないのは私が居ないからだもん。私が何かしたと、そう戒吏は言いたいらしい。でも残念、私は何もしてない。
全部、カン太の独断。
「さあね。本人に聞けば?」
「…アイツの問題だ。無理強いはしたくない」
それは時と場合になるんじゃないかな?ジッと待ってても来ないものは幾ら経っても来ないよ。