牙龍−元姫−
「カン太は、カン太だよ」
幾ら私に気を使ってくれているとは言え、牙龍の一員。
総長が自ら自分を気に掛けていると分かれば私が言わずとも総長の元へ走るだろう。
「待ってるんじゃないかな?」
きっと―――否、絶対に。
遠回しに何か言ってあげたら?そう含みを入れる。それを戒吏が分かっているのかは不明だけどね。
私はカン太の為に言ったんだ。カン太は私の事を大切に思ってくれてる。そう思ってなくても私にとってカン太は大事な人だから。
いつも私を笑顔にしてくれて励ましてくれて。感謝の気持ちも込めて―――――――――――なのに戒吏は私をジッと見つめて、
「お前には関係ない」
そんなの、知ってる。
言われなくたって分かってるよ。理解しているのに胸が痛くなった。