牙龍−元姫−
分かっているつもりなのに
痛くて 痛くて
苦しくて 辛くて
私は痛む胸の傷痕に耐えながら、ジッと私を貫く視線を見直す。
合わさる目にギュッとスカートの上で拳を作る。
「…っ勘違いしないでくれる?」
言葉を発するため声を出そうとしたが掠れ声が出た。声が出にくい。
「私が気にしてるのは牙龍じゃなくてカン太なんだから」
強がりなのかもしれない。それでもいい。想いを言葉にのせるのは難しい。でも伝えようとするのはもっと難しい。
―――でも嘘をつくのは簡単だ。
「いい気にならないでよ、自意識過剰なんじゃない?」
……言い切った。
でも鼓動がバクバクと鳴りやまない。破裂しそう。爆発しそう。私を見る戒吏の視線に向けることすら出来ない。
性格悪い女と思われているだろうか?――――何を考えているのか分からない。
しかし、今は分かろうとする余裕すらない。