牙龍−元姫−
「ってめえ!ふざけんじゃねえぞ!それは俺様のじゃねえか!猿はバナナでも食ってろ!」
「なぬ!んな決まりないじゃん!いまはカレーパンが食べたい気分だから無理ですうぅぅ」
「なら蒸しパン食うぞ」
「むぅぅりぃぃ」
「どっちかにしろやブス猿ッ!」
廊下を歩きながら蒼衣が買ってきてくれたコンビニの袋からパンを取る。遼太と寿々は蒸しパンとカレーパンを取り合っている。
遼太は激辛カレーパンが大好物だが寿々は現実カレーパンを譲らない。
おっ!ラッキー
チョコ入ってんじゃん!
「なあなあ蒼衣!チョコ食っていいか?」
「お〜。食っちゃって〜」
へへっ!
チョコ好きなんだよな〜!
チョコパンを袋から取り出す。頬を緩まし食べながら歩こうと袋を開けようとする。しかし、
――――シュバッ!!
何故かいきなりチョコパンが手元から消えた。
は?
チョ、チョコパンは!?
慌てて辺りをキョロキョロ見渡すすと奴の手元に発見。
「なっ!おまえっ!」
「へへ〜ん!チョコパンはアタシのだもんね〜だ!」
「ブッ飛ばすぞ!」
チョコは俺のだ!チョコだけは許さねえし!どんだけ食べれば気がすむんだよ!?だいたいカレーパンはどうした!
寿々とカレーパンを取り合っていた遼太は、カレーパンを嬉しそうに上に放り投げている。どうやらカレーパン争奪戦に勝利したみたいだ。
遼太かなり笑顔だし…
気持ち悪っ!
そんなことよりも――――‥
「返せよ俺のチョコ!」
「絶対渡さん!遼ちんにカレーパン獲られたんだ!チョコは護り通してやる!チョコレート王国を設立してやるんだ!」
「……なら寿々の蒸しパン食おう」
「ぬああああああにぃぃぃぃ!?張り倒すぞチビぃぃぃ!」
「此方の台詞だ!つーか誰がチビだ!」
これ寿々と遼太のやり取りじゃんかよ!やっべー……
止めてくれ。コイツらと同レベルとか一生の汚点だ。
「オメェら、もうちょい静かにしなようぜ〜?」
なぁ?と蒼衣が注意してくる。怠そうに。寿々はえーと文句を垂れる。
そんな不貞腐れる寿々をみて携帯をカチカチといじり始めた蒼衣。意外と変なとこで優しいよな、蒼衣って。面倒見いいし。
「仕方ねーな〜。庵にメールしてやるよ〜。チョコでいいのか?」
「ううん!チョコあんま好きじゃないしメロンパンでいいや!」
ぶっ飛ばすぞお前。