牙龍−元姫−
突如、あまりにも鮮明に浮かび上がった響子の顔に肩が跳ねる。俺は蒼衣と遼太を見るが、話し込んでて気がついてない。寿々もパンを食べてて同様。


気がつかれていなかったことに、ホッとした。何もやましいことなんてないのに。でも後ろめたさがあるのは確か。













―――近頃。



気がつけば響子が頭を駆け巡る、無意識に。しかし何故か前のような憎悪と違う。


確かに前までは憎しみや恨みの感情しか抱いていなかった。でも今は何かが違う。その何かが分からねえ。





響子と言うのも躊躇いがなくなった。前は『死んでも呼ばねえ!』とさえ思っていたのに。響子を思い出す度にぽっかりと空いた心が虚しくなる。





言葉にするなら寂しい―――?



虚しさがアノときと似ているように思った。
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