牙龍−元姫−
はあ!?ふざけんなよブス!
庵くんに触ってんじゃねーよ!
周りから聞こえた声に掴んでいたカーディガンは直ぐ様離された。僕としては有り難かったけどね。
「…場所移動してもいいかな?」
「は?………どうして?」
苛つく僕を更に苛つかせた。突然の申し出に思わず低い声を出てしまう。それと同時に眉を顰め睨み付けた。
しかし苛立ちをどうにか抑えて、どうして?と声を掛けた。
「此処じゃ無理なの?」
「……こ、此処ではちょっと」
僕としては要件だけ言って欲しいから何処でもいいんだけどな。
う〜ん……。
どうしようか……と悩む。
悩む僕と焦る女の子に後ろに居た友達らしき女の子が乱入してきた。
「もう!早くいいなよ!」
「で、でもっ」
「焦れったいっ!―――――――ねえ七瀬くん!この子七瀬くんに一目惚れしたの」
アッサリ友達がズバッと言って退けた。女の子は先程より更に顔を赤らめている。
「――――で?」
「え?」
「で?要件はなに?」
「だ、だからこの子、七瀬くんに一目惚れして……」
何度も言わなくて分かるよ。
僕に一目惚れしたんでしょ?――よく居るんだよね、こう言う勘違いする子。"特別"だと勘違いして言い寄る子なんて山程いるから。