牙龍−元姫−
「ありがとう。でも一目惚れしたから、なに?」
「何って…」
「それを伝えられて僕はどうしたらいいの?ハッキリ言って迷惑だよ」
「なっ!なにそれ!?この子が貴方のこと好きだって言ってるんだから―――――」
「気持ちに応えろって?それが迷惑なんだよ。応えられないのに言われても仕方ないよね?」
淡々と言い張る僕に凄む女の子の友達。逆ギレとかや止めて欲しい。何も僕は間違った事は言ったつもりはない。自分の言い分を押し付けないでほしい。
「第一それをどうして君が言うの?自分の気持ちは自分で伝えるモノだと僕は思うけどね」
苛ついている僕は開いた口が止まらない。きっとピリピリとしたオーラが僕から垂れ流しになっていると思う。それが感じ取れるのか外野も静か。
打って代わり騒がしかった廊下は鎮まり返るそれはとても異様な光景だった。
「…あ、あの!」
僕の言い分に言い返せなくて口を閉ざす子に代わり、女の子が声を張り上げた。鎮まりかえる廊下では異様に大きな声に感じる。
「わ、私…………七瀬くんのこと好きです、本気で」
先程のようにおどおどした雰囲気とは一転。何かを決意した瞳で、ハッキリ自分の気持ちを言葉に乗せる。
「えっと」‥―――――言葉を詰まらせながらも女の子は続ける。
「気持ちに応えるとかじゃなくてただ伝えたかっただけなんです」
―――――――本気で好きになってしまったから
「…困らせてすみませんでした」
謝罪の意を込めてお辞儀する女の子。
数歩後ろで友達は何とも言い難い表情をしている。そんな友達を知ってか知らずか友達の手を掴むと足早に去ろうとする女の子。
その子を僕は引き留めた。
――‥‥それも多分、気紛れ。