牙龍−元姫−
―――ガコンッ
自販機から落ちる音。落ちてきた葡萄ジュースを手に持つ。片方の手にはブラック珈琲とオレンジジュース。
先程までに騒がしかった廊下は違う意味で鎮まり返っている。
あの後直ぐ4限始まりのチャイムが鳴った。それと同時にバラバラと野次馬が動き、今に至る。人気が少ない廊下には僕ひとり。
――コツコツ
広い廊下で足を進め売店へと歩く。ついさっきメールが蒼から届きメロンパンと来た―――――――大方寿々だよね?遼はカレーパンだし。そう考えつつ足を進める。
――コツコツ
――――コツ…
足を止め微かに二重して聞こえた足音に耳を澄ます。
――コツコツ
今僕は足を止めている。歩いていないからこの足音は僕じゃない。この角を曲がった先から足音が聞こえて来る。
サボっている人かな?それか教師?のんびり考える。慌てる必要なんて皆無。どうせ僕に指図なんて出来やしないんだから。
淡々と足を進め曲がり角を曲がった――――――――――ッ!?
曲がった瞬間、即座に僕は目をこれ迄かと思うほど見開いた。
こういう状況もなくもないと思う。だって彼女も神楽坂の生徒なんだから。でも突然すぎると思った。偶然にしては出来すぎだよね?
「…響子」
「…い、おり」