牙龍−元姫−
歯を食い縛り溢れ出しそうな悲痛感にグッと堪え忍む。




「そんなことな―――‥」

「私は裏切り者なの。分かってる?」




自分なちが変われば、何とかなる

そうずっと思ってきた庵。


しかしどうにかなるには響子の意も必要なんだと当たり前のことに気づかされた。


響子は今まで一人で堪え忍んできた。沢山傷ついた――――――――――――それは紛れもなく自分達のせいで。


なのに今更元の関係になんて戻れるの――――?




当たり前のことに気付き、やっと自分の考えが甘かったことを理解する。




今すぐにでも過去に戻ってやり直したい。響子の居たあの頃に戻りたい。叶わないと知りながらも庵は願ってしまう。


虚しくも響子は庵に取って残酷な言葉を続けた。








「私には‘関係ない’ことなの」




庵は知る由もないが、


この言葉は響子が自分に言い聞かしていた言葉だった。




――――これは庵の総長様からの直々のお言葉なんだよ?だから馴れ合いなんて無理だよ。




敢えて戒吏が言ったとは思わせないように。自分の意思だと思わせるように。でも一方では違った。本当に響子は今の牙龍には関わりたくなかった。いろんな複雑な葛藤で頭がパンクしそうな響子。




――――橘さんのいる牙龍に戻りたくないのかもしれない。




簡単に言えば響子の気持ちはこれで纏まっていた理解もしていた。
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