牙龍−元姫−
きっと庵は本気だった。なのに、むしゃくしゃする感情をぶつけてしまったと後悔の念が募る響子。響子の瞳には困惑した庵が映っている。そして庵の瞳には苦虫を噛み潰したような顔をする響子が。
「きょお――‥」
「じゃあね」
庵の言葉を悟り呼び掛けに止まることなく逃げるように去っていく響子をずっと見つめている。
いつも手からすり抜け捕まる事を知らないよね、と庵は思った。
窓から外を覗けば空高く飛び回る数羽の鳥達。平行に綺麗な羽を羽ばたかせ優雅に空を舞っている。何にも左右されず逃げられる羽。
逃げる響子も空を飛び回る鳥のようだと庵はひとり窓から快晴の空見上げながら思った――――――――‥‥‥