牙龍−元姫−
「あ!ほら見なよ!」
突然。一緒に入学してきた友達が慌てて私の腕を叩いた。ちょっ!痛いんだけど!強い強い!そんな引っ張らないでよ!
私は強く引っ張る友達の手を腕から剥がしながら指が示される先の方を見た。
「―――――あ。」
無意識に零れ落ちた声。
友達の指が示された先には見慣れた神楽坂の制服を身に纏う彼女。同じ制服なのに彼女が着ると違う物のように感じるのは何故なんだろうか。
スカートから覗く脚は透けるほど白肌な綺麗さでスラッと細い。しかし触ると柔らかそうな脚。
髪はミディアムのボブヘアー。しかし今日は巻いるのか髪の毛がクルクルと綺麗に渦を巻いている。
「いたよ!野々宮さん!」
隣にいる友達が興奮しているのか私の腕を叩くが先程のように気にはならない。同じ強さで叩いているのに痛みも感じない。
意識は全て優美な彼女に奪われてしまっているからだ。視線も思考も全て奪われている。私が見つめる先にはただ1人――――――――‥‥
〈野々宮響子〉さんに釘付けだ。