牙龍−元姫−
俺はアイツ等を馬鹿だと嘲笑った。しかし本当に馬鹿なのは――――‥
「俺か」
一度諦めようとした想いが今になって溢れ出して来ている。愚か過ぎる。一度響子先輩への気持ちに蓋をした。それは相談相手の立場に居たいがために。それを響子先輩も望んでいた。
恋愛なんて儚い。脆い。すぐに消え褪せる。俺は恋愛ではなく時間を選んだ。信頼性の作れる友情の立場を取った。
――――――先ほど廊下で七瀬庵を見かけた。本当にたまたま。
しかしその後に響子先輩が来たのに気づき息を潜めていると、七瀬庵が響子先輩に想いを告げた。
それを見たとき激しい憎悪に襲われた。俺の響子先輩に触るなと。この感情の変化に戸惑ってしまう。最近独占欲が格段に増している。
初めはただ、
よくある子供のお気に入りの人形を取り合う感覚だった。お気に入りの人形(響子)が取られるのが嫌でも駄々をこねる子供(千秋)
そんな意識の程度だった。
しかし違う。
そんな遊び心じゃない。
そんな感覚では済まされない程に後戻りは出来ない程に、想いは募りに積もっていた。牙龍の奴等に会った時点で鍵は開いてたんだ。それに気が付かず、ただ溢れんばかりの独占欲に振り回された。