牙龍−元姫−
大粒の涙を溢す私を見た早苗はせせら笑いを浮かべると更に私を睨み付けてきた。(―――――――――――薄ら早苗の瞳が湿りを帯びて潤んでいるように見えたのは気のせい?)
「は?なに?その顔?何でアンタがそんな顔すんの?被害者面とかふざけんなよ!」
叫ぶ早苗に私は思う。
微かな希望を込めて…
ねえ早苗?
「私たち、友達だよね?」
「……何言ってんの」
『私達って友達なの?』
『何言ってんの?当たり前じゃん!』
大分前に交わした言葉。
てっきり彼の時と同じ言葉を言ってくれると信じていた。いまは言い合っているけど友達には変わりないと私は思っていた。
「もともと友達じゃないし」
―…………でも早苗はそうじゃ無かったみたい。
冷ややかな視線と言葉には憎悪が籠められていた。思わず背筋が寒くなるような早苗の瞳。毛嫌いなんて生易しいものじゃない。これは憎しみ。
早苗との出来事が走馬灯のように流れる。
わたし友達なんていらないと思ってたけど……
本当はね?
友達が羨ましかったの。
一緒にお喋りしてご飯食べて笑いあって。普通のヒトからすれば極普通の事で有り触れた日常だけど私はその"普通"が羨ましかった。見えを張って一匹狼気取りだったけど本当は"友達"と呼び合う存在に憧れていた。
だから早苗が話し掛けてくれたとき凄く嬉しかったの。
早苗。ゴメンね……?
早苗はもう私の事なんて嫌いかも知れないけどこのまま友達だと思ってていいかな……?
そう思惟して早苗に微笑む。涙で滲む視界は徐々に霞んでいった。そして―――………
――――――――――――――――――――――ぷつん
私の頭は真っ白になり思考はシャットアウトした。