牙龍−元姫−




「二日前から来てないよ?」

「て言うか来たらまた虐められるだけだし!」

「あんな奴は来なくていいって!空気汚れる」

「言えてる言えてる!」





顔を見合わせて笑い合う女の子達。いつもならホノボノとした空気が心地好く私も笑うところだけど今は冗談でも笑えない。交わされる言葉に表情が強張る。





―――…なに言ってるの?



早苗のことだよね?



虐められるってなに?



早苗は虐められる子じゃないよね?明るくて皆の人気者で気取らないから周りからの評価も高かった。なのに―――――――――――――――――どういうこと?



混乱してグチャグチャに入り交じる思考。だけど聞こえてしまった一言で私は凍りついた。
















「響子ちゃんを叩くからこんなことになるんだよ」





……………え





「自業自得だよね〜?」

「もともとアイツ気に入らなかったし丁度いいけど!」

「早苗って調子乗りすぎだよね?リーダーシップとりすぎだし」





なんで



なんで、





「響子が叩かれてたって部活帰りの子がみてたんだよ!」

「あたしらが仕返ししてやったからね!」

「自業自得だよね?」





なんでなの……?



友達じゃないの?



…………っ



嫌だ、





「………ワタシしんどいから」

「え!?大丈夫?病み上がりだもんね。保健室着いて行こうか?」

「………ううん。大丈夫だよ」





逃げたい



早くここから逃げ出したい



早ク。ハヤク。



ココカラ、ニゲタイ。






―――‥私は一刻も早くここから立ち去りたかった。しんどくは無い。ただ頭が痛い。



どうして?友達だよね?



つい最近まで友達だと断言していた子をどうして急にそんな無下に出来るの?



こんなことを考える私が可笑しいの?



―……そんなことない。皆が異常で私が正しい。



………正しいよね?



何事もなかったかのように平然と笑っている女の子達と居ると思考が可笑しくなりそうで頭が痛い。




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