牙龍−元姫−



保健室には行かない。ズキズキと痛む頭に耐えながら額を抑えて廊下を歩く。宛もないまま。



続々と登校して来る生徒は教室に向かって歩いているのに私は独り、流れに逆らって学校から遠ざかろうとしていた。



そんな私を引き留めたのは――――――‥





「ちょっといいか?野々宮」





担任の先生だった。









* * *





「ほら、お茶でいいか?」

「……すみません」





場所を移して【生徒指導室】



頭が痛くて眉を顰める私に気を使ってくれたのかお茶を差し出してくれた。手渡されたコップを口に付ければヒンヤリと冷たいお茶が喉を通る。



お茶を飲む私を見ながら本題とも言える話題を持ち掛けた先生。





「田中のことなんだが……」




田中とは早苗のこと。田中早苗、それが早苗のフルネーム。先生が早苗の名前を口に出したと言う事は矢張り早苗関連の話。



私は案の定出た名前にやっぱり――――‥と思った。



言いずらそうする先生を横目に私は私の聞きたい事を口に出す。





「早苗はどうしたんですか?」

「……もう来ない」

「それは不登校で、ですか?」





教室に居た女の子達の話ではそう言う事だと思う。女の子達が虐めたから登校を拒否している。そういうことだと思ったけどどうやら違うみたい。





「昨日親御さんが学校にきて転校することになったみたいだ」

「………え?」





………っ転校!?


なんで!?急すぎる!


早苗と仲直りしてないのに…っ!





「……何でも髪を切られたことが決定談らしい」





先生も止められなかったことに悔やんでいるらしい。唇を噛み締めて悔やんだ表情を浮かべる。



でも私は先生を気にかけるよりも1つ気がかりな事があった。





「―……髪を、切られた?」





あの、長い髪を?



林くんに恋してからずっと伸ばしていた綺麗な髪の毛を?



切られた……?





「ああ。そうか。野々宮は休んでいたな。実は――――――」





思い返すようにゆっくりと先生は話し出した。



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