牙龍−元姫−






――――――それは内容には驚かずに居られなかった。こんな短期間でそんな事をされたの?



昨日友達だった子に?



昨日友達だった子にそんな事をする子たちも信じられなかった。友達が居なかった私を輪に入れてくれた彼女達。こんなにも脆くアッサリと崩れた友情に惚ける。



友達って何なんだろう。





――――――地味な数人のシカトから始まった虐めは段々と集団で無視するようになったらしい。



上履きを隠すところから始まり、教科書、筆記用具、体操着。体育のバスケットボールでは笑いながら早苗にボールを当てまくる。給食のときはお皿の上にゴミ箱をひっくり返して塵をぶちまけられたらしい。掃除のときは水がついたモップで数人に押されていたと言う。



それも全部他の先生は見て見ぬふり。止めることをしなかったみたいだ。思春期である子供達の些細な喧嘩だと言った。



早苗は先生にまで見棄てられてどんな気持ちになったんだろう。守ってくれる者や味方が居ないなかで過ごす学校生活なんて苦痛でしかないよね。学校なんて謂わば檻。入れば終わるまで出られない監獄。教師に逆らえばそれ相応の罰がある。本当に檻みたいな場所。





―――――早苗が学校に来なくなる最終日が一番酷かった。



制服を隠されたため体操着のまま教室に入ってきた早苗を見て数人の女子が体操着じゃダメだよ、といちゃもんをつけて体操着を無理矢理教室で脱がしたらしい。



女子は面白がり囃し立て男子は携帯のムービーで撮っていたらしい。思春期の女の子が大勢の前で服を脱がされてフラッシュを浴びる気持ちを考えると――――――――――今すぐにでも早苗の元へ駆け寄って抱き締めたい気持ちに駆られた。



放課後には女子が男子に頼み暴行したという。日々のストレス発散をするためか「サンドバッグになれよ」と言った男子。



見えない所を集中的に殴られた。お腹、腕、足。内出血ばかりで、ドス黒く変色していく身体。



そして傷だらけの早苗はそのまま無惨にナイフで髪を切られたらしい。









―………酷い



私は静かに涙を溢した。



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