牙龍−元姫−
「顔はヤバイって〜。見えない所にしなきゃ!」
「一発くらい大丈夫だって!」
私が床にひれ伏す無様な姿を見て嘲笑う。愉快だと言わんばかりの笑い声が4人だけの教室に響く。ユミさんに「ヤバい!」と止めながらも顔は「いい気味だ」と物語っている。
ユミさんは彼女達の数歩後ろで腕を組み私を見下ろしている。その口は酷く不気味に歪んでいた。
ユミさんと視線を交わせる私は振りかぶられた足に気づいていない。視線を外したときに時遅し。
「ほら―――よっ!」
「―――痛っ」
勢いよく振り上げられた脚が私のお腹を命中。爪先がお腹にのめり込み咳き込んだ。余りの痛さに苦しく悶える。
顔を顰める私を見て彼女達はまた笑う。
――――‥其を最初の灸かのように次々に蹴られた。
全て制服で隠れるとこばかり。何度も何度も同じ所を蹴られる。たまに意識がぶっ飛びそうになる激痛に耐えるために奥歯を噛み締めた。
たった数秒‥‥
それとも、数分か。
端は数時間たっているのかもしれない。時間感覚をも分からなくなるほどに思考を麻痺させたられた。ただ早く終わって欲しい―――――――そう切に願った。
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「………っはあ!な、何コイツ!マジでムカつくんだけど!何で声ひとつ出さないわけ!?痛いなら叫べよ!頭イカれてんじゃないの!?」
私を蹴り続けていた1人の女子生徒は私のお腹を踏みつけると声を荒げた。
窓からはオレンジ色の夕方の日の光が射し込んでいる。電気のついていない室内では夕陽が電気変わり。
「なに強がってんだよ!泣き叫べよ!」
蹴られた私の腕から鈍い音が鳴った――――――…―折れたかな?感覚が麻痺したのかあまり痛みを感じなくなってきた。
こんなにも冷静な自分が、怖いと思った。