牙龍−元姫−





「あははははは!」





急に大声で笑い始めたユミさんはまるで壊れた人形のよう。カラクリ人形が顎を動かせカタカタと音を立てながら笑うときの不気味さ。少し震える体を自分でギュッと抱き締める。



友達2人もこれは予想外だったようでユミさんの甲高い笑い声に肩を大きく揺らして動揺する。





「あはははは!ほんとムカつく女ッ!」





天を仰ぎ笑っていた顔を私に向ける。口は歪んだ笑みを見せる。隙間から見える歯はギリギリ噛み合わせ音を鳴らしていた。瞳は逝っている、今にでも私を殺すかのように。





「その減らず口を黙らせてやるッ!」





――――‥きゅぽんっ



そんな効果音とともに瓶のコルクが外れた。中に入っている液体がゆらゆらと大きく波を打つ。



あれって………



私は目を凝らして液体を見つめる。








「――――――硫酸?」





私の考えを代弁するかのように彼女の友人が声を小さく発した。その言葉にもう1人の友人は驚き、慌ててユミさんを宥める。





「ちょっとユミ!落ち着けって!それは流石に不味いから!」

「黙れ!」

「ひっ!」





逝っている瞳で睨み付けられ恐怖を隠せずに脅える友人。その友人よりも脅えているのは―――――――――――――私。
< 215 / 776 >

この作品をシェア

pagetop