牙龍−元姫−
だがしかし、叫ぼうとするユミさんを無理矢理押さえつけたは彼女の友達。
どうやら学習したみたいで宥めるなんて無意味と分かったらしい。
グイグイと2人でユミさんを引っ張り第二生物室から出ようとしている。ユミさんは腕を振りほどこうともがく。
「離せって!」
「ユミ!いい加減にしなって!もう行くよ!」
強引にユミさんを連れ去る。その間も2人は一度たりとも橘さんを見ようともしなかった。
「くそッ!―――お前ら覚えとけよ!」
「ばいば〜い。」
入り口から顔だけを覗かせ苛立ちながら叫ぶユミさんにブラブラと手を振った橘さん。
怖いもの知らずだな……と私は深く橘さんに感心した。
* * *
「―――ふぅ。」
静けさが戻る第二生物室。生物室ともあってレプリカや模型が沢山ある。医薬品の独特の匂いが鼻を掠める。
安堵と共に肩の力が抜け、先程は全く気にも止めなかったことが入ってくる。
ひとつは―――――…夜の生物室は怖いということ。 生物室だけに限らずかも知れないけど怖い。灯りがないから尚更。