牙龍−元姫−
「あ」
「?」
「………あ、」
"寿々ちゃん"と呼んだ私の顔を見つめて彼女は「あ」しか言わない。だけど私の顔を見ていると言うより何処か遠くを見据えている。
そんな寿々ちゃんを見て私は首を傾げた。ただ「あ」を続ける彼女―――――――すると。
「ぎょええええええええ!」
「……っきゃ、」
――――――――後日談だがその強烈な叫び声は第二生物室内に留まらず校内中に響き渡り怪異と噂になっていた。
「きっ、きょっ、響子ちゃんが!響子ちゃんが寿々ちゃんって!寿々ちゃんって言った!」
「だ、ダメだったかな?」
「ち、ちゃうちゃう!ち、違うんだって。嬉しいんだよ!」
興奮する寿々ちゃんに、もしかして嫌だった?と思ったけど、そうではないみたいだからひと安心。
嬉しいと言った寿々ちゃんは朗らかさが漂う笑顔を見せてくれた。
「そんなに嬉しいんだ……」
「当たり前だって!だってアタシ等友達じゃんか!」
たかが名前ごときで一喜一憂する寿々ちゃんが私は不思議で仕方なかった。戸惑う私を寿々ちゃんは笑って友達だと言ってくれた。