牙龍−元姫−
ただ、走る走る。
身体に激痛が起こり、目の前が霞む。脚の感覚はなく気を抜けば、ガクンッと砕けそう。腕から肩に掛けての痛みが半端ない。
でも少しでも遠ざかりたかった。何からかは私自身分からないけど
「……はぁ、ッはぁ」
いつの間にか学校を出ていたのか辺りがガラリと変わっていた。
暗い学校とは違い、灯りがちらほら街を灯す。
人気も多くなってきた。
どれだけ走ったのか分からない。息切れが酷く、呼吸がしにくい。疲れから来る息切れと痛みからくる息切れ、二重にして襲いかかる負担。
駅前のコンビニ近くで脚を止める。
あまりに不自然な私に行き交う人はチラチラ視線をよせた。
顔は真っ青、冷や汗を流しながら、肩で息をしている。身体中を駆け巡るあまりの痛さに前屈みになりながら歩く姿が好奇の目に晒される。
……このまま倒れそう。
「……いッ」
歩く度に激痛が伴う。
それでもこんな人気の多いところで倒れるわけにもいかず、比較的人気のない路地に入ろうとする。
一歩。また一歩。
歯を食い縛り、脚を前に出す。この一歩が何百歩をも歩いたように錯覚させる。普段、何気ないこの距離が――――今は物凄く遠い。