牙龍−元姫−




いや。ちょっと待てよ?



確か響子ちゃんと戒吏は別れたんだよな?―――――そうだ。そうだった。別れたんだ!なら俺にもチャンスあるんじゃねえのか?









「………んな訳ねえよな、」





なに寝惚けた事言ってんだ、俺。絶対に叶わない望みと下らない考えだ。現実見やがれ。



急に虚しくなりテーブルに淋しく置いてある串カツに手を伸ばし口に含む。――――冷たてえ。冷めてんじゃねえか。



そして俺の心も冷たい。虚しすぎるぜ。1人で串カツとか寂しすぎるだろ。







―――――――こんなときは豪が居たっけ、



ふと昔の光景が蘇る。



きっと、もう、願っても叶いはしない当時の光景が。





「………地獄か」





昔の記憶に靄がかかる。いつかは豪の記憶が消え失せて過去になるのかと思う俺は白状な奴なのか。


これから豪にとっては、生き地獄なんだろうな。じわじわと死にたくなる程の絶望と痛みを味わされるのか。



助けなんていない。俺も助けられはしない。あいつらを止めることなんて不可能に近い。止められる奴なんていねえだろ。



――――――豪、お前は龍の尾を踏んじまったんだよ。
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