牙龍−元姫−




離れるまでは気づかなかった、



大切さとか。

思い入れとか。



こんなにも、自分が執着していたこととか。



まだ全てを理解していない、中途半端なあいつらの心中は複雑なんだろうな。



元は傷つくことも、傷つくための繋がりさえないはずだったのに、―――――――――その繋がりを結んだのは自分。



そして絶ったのも自分。



彼女を求めるが故に結んでしまった糸。



普通に干渉せずに入れば結ばれることの無かった糸。



なら、
結ぶことなく、
繋がることなく、
あの子に出逢わなかったことが最善の選択なのか、



―――なんて、無意味な考えだ。



あいつらがそんなこと思うわけもない。きっとあの子に対する思い入れは俺が思うよりも遥かに上回っている。
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