牙龍−元姫−
逆理想郷の鐘
ガチャン!
ガシャ
――――ガンッ
――ガン
きらびやかな一室。牙龍の溜まり場にある選ばれたものだけが足を踏み入れる事ができる幹部だけの部屋。
“倉庫”というよりも倉庫を改造して造られた建物。小汚ない雰囲気なんてものはなく、不良の溜まり場とは到底思えない。
(幹部室から機械音が聞こえるのはいつものこと。)
「だああああ!わかんねえよ!」
バザーッとプリントを宙へと放り投げた、空。真面目に机に向かっていた集中力が途切れたみたい。短気なんだよ、もう。
白い用紙が雪のようにヒラヒラ舞う。
天井の飾りの電灯のシャンデリアが宝石みたいで栄える。
「空、やらなきゃ駄目だよ。全然進んでないよ?」
ああああ〜!と発狂する空に僕は声をかける。ホント全然進んでないんだからね。答えが埋まってないところの方が多い。
何時間もプリントと睨めっこしていたから、気が可笑しくなったのかな?
「だってよー、わかんねえもん!英語とかなくても生きていけんじゃん!」
「でも今は必要だよ?」
「そ、そうだけどよー…」
必修科目の英語をサボりすぎの空に出された課題プリント。授業をサボらないという選択義は空にはない。
かれこれ何時間もやっている。なのにプリントはほぼ白紙…。なかなか思うように進まないプリントに空は凹んだ。
―――――凹む空と、空に勉強を教えていた僕の耳に相変わらず聞こえる音。
ガシャガシャ
―ガコンッ
ガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャ
――――「だあああああ!うっせえよ!いい加減にしろよ、ガシャガシャ耳障りだっつーの!」
項垂れていた空は震え出したかと思うと耳障りな音に、とうとうキレた。そのパッチリした眼を怖く釣り上げて怒鳴る。