牙龍−元姫−
「あ、あの」
オロオロと自販機の前に立っている超絶美少女に声をかける。ゆっくりとアタシの方を振り向いた、マイエンジェルは百合の花ようだった。
フワフワとした雰囲気。振り向く際に良い香りが鼻を掠めた。ヤバい。本気で鼻血出そう。失神寸前の橘寿々。と、とりあえず話し掛けてみましょうか。
「ど、どうしたの?」
ぬおおおおおおおおおお!
しおらしくなりすぎたっ!いや、初対面だからこれぐらいがベストなのかもしれない!ふふん。伊達にギャルゲーを制覇してきてないぜ!
だけどアタシを見ると少し吃驚したかのような表情だった―――――――――気のせいかな?
「ほ、ほら。ずっと自販機の前にいたでしょ?」
「え、あ。うん」
怪しまれないように弁解する。いかにも悩める美少女に声をかけた健気な女子生徒を気取ってみた。決して騙している訳ではない。
知らない親父に声を掛けられたら誰だって警戒するでしょ?あんな感じ。警戒を和らげるために優しい優等生な少女を気取る。これも桃子ちゃんに近づくためなの!
それにしても―――…
「お金、忘れちゃって…………」
声すげえ可愛いいいいい!ぎゃああああああ萌えええ!こりゃあ、いきつけのメイド喫茶のナンバーワンメイドのマナちゃんよりキュートだ!目を伏せて悩むところも愛くるしいィィィィ!!
よっしゃあ!
「もっ、桃子ちゃん!アタシが買ってあげるよ!」
「え。も、桃子?わたしは響――――――」
「何飲むの!?桃子ちゃん!」
何かを言い掛けた桃子ちゃんだったが興奮気味のアタシは最早誰にも止められない。鼻から息が吹き荒れる。そのまま血も吹き出しそう。それは困る。ドン引きだ。
美少女桃子ちゃんの飲むもの!お汁粉とか青汁とかもギャップで可愛いけど!でも、ここはやっぱり―――――……
「じゃ、じゃあイチゴミルクで」
この子は期待を裏切らなああああああああああ!(感涙)
桃子ちゃんはイチゴミルクを飲むと思ったよ!王道な女の子路線に行くと信じてた!ピンクと苺がよく似合う女の子だよ!(激感涙)