牙龍−元姫−



戒吏が『何だ』と言った声が耳に入った。



外に出るのは通話終了後で、まだ数分は掛かると察してソファーに逆戻り。



空もそう思ったのかドアから遠ざかり此方に来た。若干、不機嫌な様子。もともと勉強尽くしで苛ついてるから相当だ。





「あーあ!早くチョコパフェ食いてえのに!何だよ蒼衣の奴、タイミング悪すぎねえ!?」

「慎さんの事じゃないかな。一緒にいるみたいだし」

「慎さん?何の事だよ?」

「さあね」

「さあって………意味わかんねえ」





僕も分からないよ。



“慎さんの事”なんてこれっぽっちも思ってない。ただのその場しのぎだ。でもそう思わないと嫌な感じが拭えない。――――僕が考えてすぎなだけだよね?



空は『あーあ』とため息ついている。これだけ気楽だと羨ましい。





考えすぎなだけ、


神経質なだけ、





そう繰り返し考える。



それを考えること自体が神経質だと言うことに気づかぬままに。
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