牙龍−元姫−





――――「ミキ郎〜!聞くでヤンス!今日も話したでヤンスよ!クールでもいつも笑顔なところがカッコいいっす!鼻血出そうっす!」

「それは良かったです」





心を踊らせながら“チアキ君”を語るニット帽がトレードマークのカン太君。



カン太君は最近笑顔で牙龍に戻ってきたんです。戒吏さんと何かしらあったみたいですが男同士の秘密らしいです。



何はともあれカン太君が元気になってくれて良かったです。





「ミキ郎も一度話しかけてみるでヤンス!いつまでも臆病ではいられないっすよ?」

「はい…」





僕は幹太郎。



皆さんからはミキ郎と呼ばれています。



気が弱く怖がりな僕でも仲良くして下さる牙龍の皆さんが好きです。





「なら今度オイラがミキ郎を紹介するっす!」





嬉しそうに言ってくれるカン太君。カン太君が嬉しいなら僕も嬉しくなります。



――――でも今回ばかりはあまり乗り気ではありません。



カン太君は最近“チアキ君”と仲良くなったらしいです。



突然すぎではありませんか?



僕がただ疑い深いだけですか?



僕は自分を守る術なんて持ってないです。喧嘩も勿論出来ません。だから昔から人を警戒する癖があります。自分を守るために。



だから“チアキ君”も疑ってしまいます。



だからと言ってそれをカン太君に押し付けるつもりはありません。僕がただ一方的に警戒しているだけです。



それに“チアキ君”とは風見千秋君の事ですよね……?



僕は風見君の事が苦手なのかもしれません。



彼は怖いです。クールなのに笑顔が爽やかで、爽やかなのにクールで。正直僕には笑顔が作り物にしか見えません。



思案しているとき偶に消える笑みが怖いです。無表情な風見君が怖いです。なぜか怖いです。
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