牙龍−元姫−
ふと、僕は辺りをキョロキョロ見渡しました。
街外れの一角の港にある牙龍のアジト。やはりそれなりに人数がいるからかアジトは大きいです。
辺りを見渡すと髪色が奇抜な人が多いです。赤、黄、緑、紫、虹色。はじめは目から鱗でしたがもう慣れました。
「ミキ郎?どうかしたんすか?何かあったでヤンスか?」
見渡す為にキョロキョロと横に首を振る、端から見れば挙動不審な僕に聞いてきたカン太君。
そういえばカン太君は髪色は黒です。相変わらずニット帽はトレンドマーク。
「カン太君は猫っ毛です。ワカメみたいです。」
「え!?どうしたんっすか、いきなり。………あ、それきょん姉さんにも言われたっす!ワカメだって!酷いっす!」
――――――僕は再度瞬時に辺りを見渡しました。
『絶対ちげえよ!』
『それじゃねえだろ!』
『まじかよ!』
『こっちじゃねえの?』
ふぅ…どうやら誰にも聞かれてないようでした。
各々何かしらやっているみたいで此方には目もくれていません。
僕はホッと肩を撫で下ろしました。恐かったです。ほんの一瞬だけ心臓停止状態になりました。
「カン太君……」
「ご、ごごご、ごめんなさいっす…………!」
カン太君は顔を真っ青にしながら口に手を当てています。自分の失言に気がついて血の気が引いたのでしょうか。
いまの僕も、きっと顔が青白いと思います。