牙龍−元姫−





「きょ、きょん姉さんの名前は出しちゃダメなんすよね…」





少し寂しげにカン太君は言いました。その顔には影があって暗いです。それにつられたのか僕も暗くなりました。



どよーんとした空気はまるでお葬式のようです。








「――――そういえばミキ郎知ってるっすか?」





少ししんみりとした沈黙が流れる僕たちの間を、カン太君が切り裂きました。



暗く俯いていた顔をハッ!と何かを思い出したように上げました。





「何がですか?」

「き………きょん姉さん学校に来てないみたいっよ、ここ2週間ほど」





少し響子さんの名前を躊躇った様でした。そして先ほどとは幾分声の音量を下げて響子さんの名前を言いました。



2週間も響子さんが学校に来てないんですか?





「……風邪、でしょうか?」

「わからないっす。でも里桜さんも偶にしか来ていないみたいっす」

「“里桜さん”?」

「あ、きょん姉さんのお友達の人っす!よく一緒にいる綺麗な女の人でヤンス!」




あの化粧が濃い女の人でしょうか?どうやら響子さんのお友達みたいでした。



カン太君は僕の知らないところで繋がりを作ってきます。交友関係の和が広いとつくづく思わされます。



僕は人見知りなのでカン太君のようには出来ないので少し羨ましいです。
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