牙龍−元姫−
カン太君の叫び声はこの大きな一階のスペースにいる全員の注目を集めるには充分すぎました。
僕は冷や汗が流れました。それはもう、滝のように。
「なんだ?」
「カン太どうかしたのか〜?」
「叫び声なんて上げて何かあったのかよ?」
ワラワラと僕たちを囲むように集まってくる厳ついお兄さん。
怖い怖い(ガタブル)仲間ながら怖いです。白目を剥かざるを得ません。口から泡が吹き出そうです。
響子さんのことを話すわけにはいきません。ならどうやって切り抜けますか?――――――僕はそう思いカン太君を見ました。
カン太君はあたふたしながらも、しどろもどろに答えました。そして瞬時に僕はカン太君に任せた事を後悔します。
「あ、あー、えーっと―――――――ッあ!こ、これ!これでヤンス!シーフードピザ!シーフードって海の食べ物って意味みたいなんす!オイラてっきり“フード”て言うから犬が食べるペットフードかと思ったでヤンス!英語って奥が深いっす!英会話にでも通おうかと思うっす!将来的にはキャビンアテンダントを目指したいでヤンス!あてんしょんぷりーず?」
―――――しーん
カン太君。
どうしてくれますか?この空気。
僕は泣きたいです。皆さんを見向きも出来ません。もっとマトモな言い訳してください。終わりです、もう。シメられて無理矢理吐かされる運命なんですね。
ああ、サヨウナラです。お母さんお父さん今まで育ててくれてありがとうございました。カン太君に無理矢理連れられるがままに、牙龍に入って不良の端くれになってしまった不甲斐ない僕を許して下さい。