牙龍−元姫−







「―――そ、それより!ミキ郎!きょん姉さんたち同じクラスなんすか!?」

「みたいです」





風の噂と言うやつです。



ですがお互い知っているんでしょうか?新しいクラスになってまだ数ヶ月。響子さんもあまり授業には出てないと聞きますしハッキリわからないです。



そうカン太君に言えば…





「きょん姉さん、牙龍に戻ってこないでヤンスか?」





何故かそう言いました。



しかも“また”です。



何なんですかカン太君は。



しつこいにも程があります。



響子さんの事を考えるといつもこれです。響子さんに会ったらしい日から、それはもう頻繁に。



事あるごとに響子さんの話ばかりです。



確かにカン太の言うようにいまの牙龍は牙龍ではないです、僕が知っている牙龍ではないです。



この広いスペースも活気に満ちて賑やかです――――――でも何か物足りないのです。



響子さんがいるときは響子さんを中心に皆さんは輪になって過ごしていました。でも今となってはその輪は点々と小さな何十個の輪になってます。





――――これが今の皆さんにとって“当たり前”なのでしょうか?僕には何が当たり前で何が普通なのかがわかりません。でも、





「……きょん姉さんに戻ってきてほしいっす。オイラ、寂しいっす」





僕も寂しいと思いました。



僕の“当たり前”はカン太君が居て響子さんが居てやっと成り立つ当たり前なんだと思いました。
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