牙龍−元姫−
羨ましいです…
「カン太君は、凄いです」
自分の意思で響子さんに会いに行って。凄いです。羨ましいです。僕には一生かかっても無理です。
「んんー……?よくわからないっすけどオイラはミキ郎の方が凄いと思うっす!」
「僕、ですか?」
突然“凄い”と言う僕に首を傾げたカン太君は逆に僕を“凄い”と言いました。
でもなぜ僕が凄いんでしょうか。気弱で逃げ腰でいつも不利にはならない立ち位置を確保しています。カン太君のように危ない橋には絶対渡りません。まずそんな勇気ありません。
「ミキ郎はオイラと違って冷静だし、後先をしっかり考えてるっす!オイラみたいに突っ走ったりしないっす!」
「それはビビりだからです。だって危険な目には合いたくないですから」
「…で、でも危険な目に合いたくないのは誰でも同じっす!それにミキ郎は実はヘタレだって、あまり顔に出さないっす!ポーカーフェイスっす!」
「僕みたいなビビりは牙龍にはそうそう居ないです。しかも今さりげなくヘタレって言いましたか?」
「………く、くーる?そ、そうでヤンス!ミキ郎はクールでヤンス!特に喧嘩するときとか!クールな男はモテるっす!冷静・クール・バッチリでヤンスね!」
「クールなのも冷静なのも逃げる方法を考えているだけです」
「……」
「……」
「……」
「……何ですか?」
如何わしげな瞳で見つめてくるカン太君。―――――ニット帽に触れながら。
ニット帽に触れているときは何かを考えているときだとわかるのは幼なじみ故でしょうか。