牙龍−元姫−
「今日は一心同体記念でヤンス!コーラで祝うっす!ミキ郎は麦茶っす!未成年者はお酒呑んだら罰金っすから!」
「…はい」
祝いなんて、やるんですね…
お酒呑まないのは賛成ですけど。―――――なんて、こんな考えするのは牙龍では僕たちだけだと思います。
僕たちは牙龍では“異質”だと思います。今時、お酒を呑む人はざらにいます。不良なんて尚更。
僕たちが牙龍だと言って信じてくれる人はいるのでしょうか。見た目も中身も世間一般が認識する“不良”とは程遠い僕たちを…
「実は二人で1つ宣言したくて“一心同体”って言葉を辞書で調べたんす!」
「ですよね。僕はカン太君が四字熟語なんて大それたものを知っているとは信じがたかったです」
「ひ、酷いっす!最近ミキ郎生意気になってきたっす!」
「それはカン太君だけにではないですか?」
寧ろカン太君だけにじゃないと困ります。厳つい先輩を敵に回すなんてこと僕には無理です。してしまった暁には一家総出で夜逃げです。
「何はともあれ祝杯っす!」
コーラが入ったコップを僕に差し出すので、僕も同じようにしました。
今更ながらの“一心同体”
―――――僕は昔からそう思っていましたけど。
照れ臭いので、それは胸に秘めておくことにします。カン太君なら馬鹿にはせず逆に喜んでくれそうですけど。
でもカン太君の場合、そのストレートな部分が気恥ずかしいんです。
「ほら!乾杯!」
「……はい」
コップとコップがぶつかり合うまで、あと数センチ。