牙龍−元姫−
続・ある日の午後1〜あの頃の僕ら〜
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(ざわざわ、)
(がやがや、)
ざわつく倉庫に、予想通りと言うかなんと言うか。
『おいおい、空さんどうしたんだよ!?』
『バイク乗って行っちまったぞ!追いかけた方がいいのか!?』
『何かあったのか?』
『お、俺に聞くなよ!』
勢いよく出ていった空のせいで下は騒がしかった。その光景を戒吏は二階から眺めている。
扉を蹴飛ばして下に降り、周りの声を無視して、バイクに跨がると夜の街へとバイクを走らせて行った。
……どれだけ派手な行き方してるの、空。全部終わったらスパルタで課題やるからね。
「……」
「……煩いね」
それを戒吏は耳を澄まして、ただ見ている。
その横に立つと苦笑いで下を覗く。
いくら戒吏だって平常心ではいられないのか。落ち着こうとしているのが分かった。
「……あ。そ、総長!庵さん!」
そんな二人に気がついた一人の男。その叫びに戒吏が居ることがわかり、辺りは瞬時に静まり返った。相変わらず反応は早い。
反射的に口を閉ざしたのは、そういう傾向が体に染み付いているからだろう。