牙龍−元姫−
空、戒吏、そして僕の様子から何かあったのは明白。
だけど今はその“何か”が分からない状態。
不安の色がスキンヘッドの顔に滲む。何もスキンヘッドだけではない。他の面々も同じだった。
――――――この建物全体が異様な雰囲気が漂い始める。
一人が不安になれば、隣にいる奴も不安になり、さらに隣にいる奴も不安になる。
その訳の分からない不安は伝染し場全体を侵食した。
それを感じ取れないほど僕もバカではない。でも何も言わない。
全てを戒吏に委ねると決めた以上は口出し無用だと思ったから。
ただ時間だけが過ぎる。粉雪のように不安が降り積もる―――――――――そんなとき。
““喩えば、””
漸く、戒吏は口を開いた。