牙龍−元姫−
「……知り合い?」
「違うの?」
「いや。知り合い、か?」
「私に聞かれても……」
輝君は怪訝な顔をすると疑問符をつけて返してきた。
「まぁ認めたくねぇけど“知り合い”だな」
「あはー。響子ちゃんが思うような“友達”じゃないけどねー」
どんな関係なんだろう?と小首を傾げると緑川君は笑みを絶やさずに教えてくれた。
反面輝君は苦虫を噛み潰したように顔を歪めるとポッキーをぽそぽそと食べ始めた。
「“冬”はノーコメントだけど“秋”はイイやつだよー。よく逢うんだよねー。ほら。俺様たちが逢ったときのこと覚えてる?」
「うん。里桜の家で逢ったよ」
―――そう。輝君と緑川君との出逢いは里桜の家にお邪魔したとき偶々鉢合わせしたのだ。私は里桜の家にお邪魔したつもりだったけど二人は“千秋の家”にお邪魔しているようだった。
稀に二人は風見家に要り浸るらしく里桜も知り合いらしく紹介して貰った。
そのときは丁度“あそこ”から去った後で交遊関係も狭まっていたとき。
放課後も特にする事がなかったので暇さえあれば頻繁に二人と逢っていた。里桜も嫌そうな顔をしつつ愉しげだったのが記憶に新しい。
「あのときも“秋”とか関係なくただの“友達”として逢ってたんだよねー」
「お前が友達とか言うの止めろよ気色ワリィ」
「アイツは嫌いじゃないからねー。何か似てるし。まぁ、その経由で“春”も知り合いなんだよ」
―――――――あれ?
「ねぇ緑川君」
「ん?」
「風見家に行ったときには“秋”も居たの?風見姉弟と私と輝君と緑川君しか居なかったのに…」
「「………」」
………もしかして変なこと言った?
静まり返った部屋。
目だけで会話する二人に居心地が悪くなり羊の縫いぐるみを抱き締めた。
自分の部屋のはずなのに居づらい。