牙龍−元姫−





「ああ?何寝てんだ。気絶なんてすんじゃねえよ、まだだ。――――――まだ、これからだろ?」





遼太さんが“それ”を再度蹴りあげる。今までの恨みと言うかのように――――――…







“まだ”と“此れから”と言っても結構時間は経ったと思います。“それ”をこの倉庫に連れてきてから。



そして声も出さず“それ”に後ろから飛び蹴りを食らわした空さん。



反論の余地も与えず戒吏さんが“それ”の前に立ちました。“それ”を囲うように、遼太さん庵さん蒼衣さん空さんと。



牙龍トップ5が“それ”を囲いました。










――――――――それからは一方的で残酷な光景。



幹部自ら手を下すなんて滅多にないです。



見せしめ?懲らしめる為?



そんな生易しいものではないです。



もっと、もっと強く渦巻いた何か。


それはあの人への想いが強ければ強い程、激しく渦巻いています。













***



「おい、片桐」





何時間経ったのか。寧ろ数分しか経っていないのかもしれません。



そんななか、漸く戒吏さんは口を開きました。



それと同時にえげつない音は止み“それ”のもがき苦しみ足掻く声だけが倉庫に聞こえます。
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