牙龍−元姫−
“片桐さん”を冷めきった瞳で見ると戒吏さんは言いました。
淡々と絶望の淵へと堕としたのです。
「助けてやるよ」
――――この時ふと牙龍に入隊したときの言葉が甦った。
当時は訳がわからなかったです。
「―……恐怖からな。」
でも今ならその意味を理解できます。
僕は牙龍へ入る覚悟が甘かったのかもしれません。
「一遍、地獄に堕ちろ。」
―――――俺達が見た地獄と同じように。
そう言わんばかりの殺気が倉庫を埋め尽くしました。
息苦しくて、手足が今になって震え出します。
情けないくらいに歯が震えガチガチと鳴る。
カン太君の左手が小刻みに震動しているのが分かりました。
人の心に住まう狂気、それこそが本来の正気なのかもしれないです。
聖なる此の場は
――――汚れた場でもあるみたいです。