牙龍−元姫−





片桐さんと言う元牙龍らしき人が情報を北に売っていたらしい。牙龍の皆を襲っていたのは北の輩だったと風の噂で聞いた。



そして牙龍は“片桐”を裁いたって噂で持ちきり。



そしてその火花が何故か私に散っている。



俯きながら歩く私を励ますように里桜は言う。





「本当いい迷惑よ。もう響子は関係ないって言うのに!ねえ?」

「…そうだね」

「何が“元姫の復活だ〜!”よ!嘗めてんの?真相が分かったからって姫に戻るとは限らないじゃない!ホント不愉快だわ!」

「…里桜は反対なの?」

「は?え?なにアンタまさか戻る気なの?」





―――戻らないよ。



こんな私にまで親身になってくれる里桜を無視して姫になんて戻らないよ。それこそ裏切ることになってしまう。



里桜が傍に居る。それだけで今の私には充分すぎるよ。



里桜を裏切る真似なんてしたくもない。それに今の牙龍に私は必要ないの。寿々ちゃんが居るもん。



―――――そう言えば寿々ちゃんあの日から会ってないな。



ふいに思い浮かび上がったのは、御下げ頭の寿々ちゃん。



何故か懐かしい気分になった。だいぶ会ってないし寿々ちゃんのことを考えてもいなかったから。



緑川君が私を助けてくれる数分前。


あの薄暗い廊下に寿々ちゃんを置いてきてしまった。



それ以来会っていない。



あの日から私はずっと学校を休み続けていたから。



久しぶりに来た学校のに、あまり良い1日とは呼べなかった。



寧ろこんな騒動があるなら休んでいたほうが賢明だったのかもしれない。
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