牙龍−元姫−





学校を出て少しだけ歩いた。



曲がり角に差し掛かったとき里桜は何かを見つけたように指を差す。





「あ、居た」





里桜が示した先には二人の男子。



ビジュアルはモデルさん並みだと改めて思った。高身長に整った顔つき。こうやって離れたところから見る機会なんてなかったから、2人が別人のように見えた。



きっとそう言えば笑い飛ばされるに違いない。



目先にはチョコを食べながら退屈そうに空を仰いでいる彼がいる。もう1人の彼はバイクに凭れかかり携帯を弄っている。



2人との距離が狭まると里桜は小走りで掛けよった。



まだ2人は面白可笑しく駆け寄る里桜に気づかない。世にも奇妙なモノを私は見てしまった気がする。だって里桜が内股で走っているから――――‥。



可愛らしく駆け寄る里桜に気づいた彼は加えていたチョコレートをボトッと地面に落として絶句した。





「お待たせ〜ダーリンっ」

「ヒイッ」





その反応も、理解出来なくはなかった。





「な、何だよ気色悪い!」

「やだぁ何なの?久しぶりにあったハニーに対してその態度!」

「ぐああああ!痛ぇ!う、腕が!腕が千切れる!」

「どうしたのダーリン?腕が何?貧弱なのねぇ。それより聞いて!今日学校ですごぉぉぉく腹が立つことがあったのよ!皆が皆、私を苛めるの…っ!」

「俺はお前に苛められているッ!それも現在進行形で!」

「里桜は悲しいわ!皆が私に言い寄るの!登校中も教室でもトイレでも移動教室でも下校中でも!本当に何も知らないのに信じてくれないのよ!?物分かりが悪いわ!私は見せ物じゃない!」

「同じく輝も悲しい!腕が千切れそうで悲しい!そして痛い!俺はお前の発散人形じゃねえんだよ!とりあえず放せ……ッNOOOOO!」





――――とりあえず里桜がスゴく苛立っているのが分かった。



その犠牲者となった輝君は必死にもがいている。急に腕に絡みついてきた里桜を引き離そうと必死だ。可哀想だけど里桜の顔が鬱憤を晴らすかの如く清々しいので何も言えない。
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