牙龍−元姫−
「――――あ、そうそう」
何かを閃いたように無感だった目に色がついた千秋。
「今日の放課後、デートしませんか?」
「デート?」
はあ?
なに寝惚けた事言ってんのよ!
ギロッと睨む私を無視して飄々と響子に話し掛ける。
「そう。入学祝に俺とデートして下さいよ」
ふざけんな。
男女ふたりで出掛けると言うことがデートなら響子と千秋は頻繁に"デート"をしていることになる。
なのに何で今更?私は二人の会話を聞き顔を顰めた。
「でも"制服デート"はしたことないじゃないですか」
「そうだけど、」
「迎えにいくから教室で待ってて下さいね」
「え、ちょ、」
響子は手を伸ばすが空を切る。
言いたい事だけ言うと去って行く千秋。認めたくないけど無理強いなところとか私に似てるわよね。