牙龍−元姫−
《わんわん!》
ところで輝君はどこに行ったんだろう?と考えていると犬の鳴き声が聞こえてきた。
《わんわん!》
目先にはナゼか輝君が柴犬と対峙している。
「うわあああああ!止めろって!噛むな!ハウス!」
《わんわん!》
「“わんわん”じゃ分かんねぇよ!」
黒色の首輪がついているから、きっと飼い犬だと思う。
その柴犬は先ほど里桜が投げたとおぼしきコレクションをかじっている。それを取り返そうと輝君は必死だ。
「まじ返せって!それは大事なもんなんだからよぉ!そんなに噛むな!…………しゃあっ!取り返した!」
《きゃんきゃん!!》(怒)
「何だぁ?怒ってんのかコイツ。何言ってんのか、わかんねぇし。所詮は犬だし怖くねぇよ」
《それは我輩の見つけた宝じゃ!横取りとは何事じゃ!小童め!》
「うおっ!い、犬が喋った…!?」
《それを置いてゆくのじゃ若いのよ。我輩は落ちてたものを拾っただけぞ。ゆえに我輩の宝じゃ》
「な、何だよ偉そうに。俺のだって言ってんだろうが。あの横暴女が放りやがったから取りに来たらテメーが盗もうとしてたんだよ」
《偉そうではなく偉いのじゃ。我輩は犬の仙人ぞ。ここらを締めるワンコ集会の町内会長を努めておる》
「せ、仙人…!?」