牙龍−元姫−





やけに真面目腐った目をする蒼衣を横目で見ると、居たたまれない気になり、スッと目を反らす。



確かあのときも同じことを言っていた。



彼女がココに来はじめた頃に蒼衣は1度禁煙している。



そのときの情景を思い出しながら2人は海を眺める。




「よく言うぜ。いっぺん挫折してるくせによォ。無理に決まってんだろ」

「ありゃあ不可抗力だ。俺は変わりて〜からな。そう、文系男子を目指してやろうじゃねぇの」

「ハッ!毎日毎日本ばっか読むのかよ?」

「あ〜それも良いかもな〜。1日1ページずつ読んでやるよ」





どれだけ遼太が嘲笑しようがバカにしようが蒼衣はサラリと受け流す。



眉根を寄せる遼太に、蒼衣は言う。





「何もオメェだけが悩んでるワケじゃね〜よ。戒吏も庵も空も戸惑ってるぜ」

「虚勢張ってるテメーに言われても説得力ねえよ。」





自分を蔑ろにする様な薄ら笑いを浮かべ、



ゆったり立ち上がると遼太が投げたタバコを踏みつけた。
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