牙龍−元姫−
「逢うのがイヤなワケじゃね〜んだろ?」
「……」
「謝り方も接し方もわからねえってか?オメェは変に不器用だからねぇ。傷つけんのがそんなに怖えなんてらしくね〜よ」
腫れ物を扱うように触れる遼太を想像して苦笑い。
遼太はただ無言で静かな海を見つめた。
「――――謝ってすむ問題じゃねえだろ」
先ほどタバコに火を付けようと持っていたライターをカチカチ弄りながら呟いた。
「俺ァ我が儘なんだよ、傷つけて突き放して泣かせて、尚も――――――離す気すらしねえ」
自分より一回りも二回りも小さな彼女が震えて脅えて泣いている情景が鮮明に脳裏を過る。
そうさせたのが自分だと分かると腹立たしくなる。
蒼衣がすんなりタバコを止めたことにも苛立った。
先早に罪を受け入れて正直に彼女に逢いたいと言う蒼衣に心底ムカついた。―――自分はそんな素直になれないからだ。