牙龍−元姫−
「まーまー大丈夫だろ」
「はぁ?」
「オメェが傷つける心配はねぇから」
何の確証もなくそういう蒼衣に怪訝な顔をする。
しかし次の瞬間「なるほど。」と納得するな否や、
先日から彼女に関する事にのみ、コイツの危険度が増したと遼太は思った。
「響子を傷つけたら俺がオメェを殺すから」
ヘラッと笑いながらも蒼衣の目は本気(マジ)だった。
「ハッ!なら殺して貰おうじゃねえか。殺れるもんなら殺ってみろよ。返り討ちにしてやらァ」
「俺、文系男子だから喧嘩なんて野蛮なこと出来ねぇよ」
「いま喧嘩売ってきたのテメエだろ」
喧嘩を買おうとするもアッサリと掌を返す自称文系男子に呆れる。
でも何だか気が楽になった気もする。しかしそれを言うとお調子者の蒼衣が調子に乗るから遼太は言わない。
蒼衣の言う通り気が滅入ってるのは遼太だけではない。
いまごろ倉庫にはキノコが生えているだろう。一夜明けて、厳ついヤンキーがめそめそしていた。