牙龍−元姫−
「げ〜。まだ14時?だりぃわ〜。さっさと16時になれよ〜」
「あ?もう14時!?まじかよ、時間経つの早すぎだろ!」
真逆のことを口にする2人。
腕時計を見て短針がまだ2のところにあることに蒼衣は不満を零すも、遼太はその逆だった。
「まだ遼ちん心の準備出来てねえの?だから1人で倉庫から出て海を眺めてたのかよ?ん?ナイーブだね〜君は」
「うっせえんだよバァーカ」
否定せずに立ち上がる遼太。
16時と言うのはとある約束をしている時間だった。
空も庵もどことなくソワソワしている。
戒吏なんて1分おきに時計を見ていたくらいだ。
そして気が付けば遼太が居なく、蒼衣が探しに来た。
もちろん優しさではなく、からかいに来ただけだ。
「まぁ少し俺も緊張するわ」
「はあ?嘘付いてんじゃねえよ。顔の締まりなさすぎなんだよ。今にでも飛び出して行きそうじゃねえか」
へらへら笑う蒼衣に呆れ果てながら立ち上がる。そして―――‥
(ポチャン、)
海に向かってライターを放り投げた。